百貨店の環境保全に関する自主行動計画
2021年9月17日改定
一般社団法人 日本百貨店協会
1.環境保全に関する基本認識
百貨店は、消費者と製造者の中間にあって流通機能を担う立場にあり、その企業活動を通じて、脱炭素社会の実現、循環経済社会における環境保全と持続可能な社会・経済発展に寄与することを目指し、会員百貨店は企業活動のあらゆる段階において、環境負荷・社会的コストの低減を図り、環境と経済の両立に資することを重要な経営課題とする。
また当協会は、会員百貨店全体の環境負荷・社会的コストの低減を図るための様々な支援活動を行い、取組みを強化し誠実かつ透明性の観点から、取り組みについて正確・確実・迅速に情報を発信する。
2.脱炭素社会の実現
会員百貨店は、全ての事業活動の中で、脱炭素社会の実現のために、CO2及びその他温室効果ガスの削減に努め、店舗におけるエネルギー効率の改善に取組み、店舗運営に伴うサプライチェーン全体で、地域的・業際的な協力による削減に取り組む。
3.循環経済社会の構築
会員百貨店は、循環経済社会・持続可能な省資源社会を目指して、サプライチェーン全体で、容器包装材使用量の削減・最小化に努め、環境に配慮した商品の充実などを推進するとともに、自らが排出する廃棄物の減量化、適正処理、再資源化に努める。
- ①持続可能な資源の有効利用のために、容器包装の適正化、容器包装材使用量の削減、再生資源を含む環境負荷の少ない包装材や環境性能が認められる製品を利用し、消費者が自ら使い道にあった包装を選択する「スマートラッピング」の普及・定着に取り組む。
- ②店内からの廃棄物の減量化と管理の徹底、分別による3Rを推進する。
- ③食品に係る資源の有効な利用の確保及び食品に係る廃棄物の排出の抑制を図るため、適量販売等のお客様のライフスタイルにあった販売を通じ、サプライチェーン全体の発生抑制と減量化に努めるとともに、徹底した分別によるリサイクルを推進する。
4.生物多様性の保全
会員百貨店は、生物多様性の保全と持続可能な利用を促進することを目指し、植林・間伐活動、里山保全活動、海の環境保全活動への参加、資材等の調達における FSC認証制度の活用などを通じた森林・水資源の保護活動に取組む。
5.環境管理
会員百貨店は、環境に関する法令等を順守し必要に応じて国際規格の認証取得や自主基準を策定し、汚染の防止、環境負荷の低減に努める。また、環境に対する意識の向上に資する消費者PRと従業員教育の徹底をはじめとし、ステークホルダーとともに環境について考え、環境分野の社会貢献活動を継続的に行い、企業市民としての役割を自覚して行動する。
当協会は、会員企業の環境保全活動状況を定期的に調査把握・結果公表するとともに、各社の状況に応じた環境管理体制の整備を促進し、業界の環境マネジメントの水準向上に努める。
6.社会との共生、広報・啓発活動
当協会及び会員百貨店は、地域環境保全活動や社会・文化貢献活動を社会的責任の一つとして捉え、地域社会、国際社会の一員として積極的に参画し、活動の輪を広げるとともに、従業員の自主的な参加を支援・協力する。
また、お客様をはじめとする全てのステークホルダーに信頼され、皆さまとともに持続可能な社会の実現に向け、環境保全、生態系の維持、生活文化の交流と創造を担う商品やライフスタイル提案など積極的に広報・啓発活動を行う。
7.数値目標
業界全体としての数値目標は、以下のとおりとする。
- ①店舗におけるエネルギー消費原単位(床面積×営業時間当たりのエネルギー消費量)を指標として業界全体で、目標年(2030年)において、基準年度(2013年度)比26.5%減とする。併せて、目標年(2030年)において、店舗におけるエネルギー消費由来のCO2排出量を基準年度(2013年)比50%減とする。
- ②紙製容器包装(包装紙・手提げ袋・紙袋・紙箱)使用量を、2000年度を基準として、2030年度には原単位(売上高当たりの使用量)で、50%の削減を目指す。また、プラスチック製容器包装の使用量についても 50%の削減を目指す。
- ③店舗からの廃棄物の最終処分量(1m²当たり)を、2000年度を基準として、2030年度には60%の削減を目指す
8.その他
当協会は、本計画の進捗状況を逐次把握するため、定期調査及び適宜必要な調査を行い、その推進に努める。
- 百貨店の環境保全に関する自主行動計画 改定の経緯
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【策定】1997年3月
【改定】1998年7月、1999年9月、2001年11月、2005年3月、2006年3月、2007年1月、2007年7月、2008年3月、2009年11月、2012年3月、2017年1月、2019年5月、2020年1月、2021年9月
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- 日本百貨店協会は、循環型社会における環境保全と持続可能な社会・経済発展に寄与することを目指し、経団連地球環境憲章及び経団連環境アピールに対応して、1997年3月に「百貨店の環境保全に関する自主的行動計画」を策定した。
- 1998年7月改定:地球温暖化防止京都会議における合意を踏まえ、当協会及び会員百貨店は達成目標に向け努力することが重要であるとの認識のもと、エネルギー消費原単位の数値目標を改定した。
- 1999年9月改定:オゾン層保護対策に対応していくべき事項を追加
- 2001年11月改定:循環型経社会形成のため、3R(リデュース・リユース・リサイクル)推進への取組み強化及び 2001年6月成立のフロン回収破壊法・PCB廃棄物特別措置法を踏まえ、その対策に関する項目を追加した。
- 2005年3月改定:京都議定書の発効(2005年2月16日)を受け、当協会及び会員百貨店は、さらに一層、企業の社会的責任(サステナブル)の観点から地球温暖化対策への取組みを強化する旨を追加した。
- 2006年3月改定:容器包装リサイクル法施行後10年の見直しを機に、容器包装削減への取組みを強化し、3R推進への取組みを着実に実行していくこととした。
- 2007年1月改定:「京都議定書目標達成計画」(2005年4月)に基づき、その実効性を確保するため、定量的な評価・見直し及び必要な対策・施策が行われることを踏まえて、さらに一層の、地球温暖化対策への取組みを強化するため、店舗におけるエネルギー消費原単位の数値目標を「基準年の水準維持」から「3%削減」として、ESCO事業導入促進等により、温室効果ガス削減に向け実効していくこととした。
- 2007年7月改定:2007年6月開催のG8首脳会議(独)で合意された目標「2050年までに温暖化ガス排出量を50%減」や政府の「21世紀環境立国戦略」、2008年G8洞爺湖首脳会議に向けた施策の展開を踏まえ、一層の地球温暖化対策に向けた行動を加速化するため、店舗におけるエネルギー消費原単位の数値目標を「基準年」比で2012年までに「6%削減」として取組みを強化することとした。
- 2008年3月改定:京都議定書目標達成計画の評価・見直しに関する報告書を踏まえ、継続的な排出削減を目指すため、店舗におけるエネルギー消費原単位の数値目標を「基準年」比で2012年までに「7%削減」として取組みを強化することとした。
- 2009年11月改定:2009年9月開催の国連気候変動首脳会議で日本が発表した、「温暖化ガス排出量を2020年までに90年比25%削減する」とする中期目標を踏まえ、店舗におけるエネルギー消費原単位の数値目標を「基準年」比で2012年までに「13%削減」として取組みを強化することとした。
- 2012年3月改定:国のエネルギー政策を受け、新たなエネルギー需給構造や社会システムの変換に対応するために、電力需要の標準化「ピーク対策」や「節電」への取組みを強化、店舗における熱源のベストミックスを確保する。また、循環型社会構築のため容器包装や廃棄物の数値目標を改定し、環境負荷・社会的コストの低減に取り組むこととした。
- 2017年1月改定:持続可能な社会の発展に向け、サプライチェーン全体で取組みを強化し、生物多様性の重要性を認識し項目を追加、パリ協定(COP21)採択を踏まえ、店舗におけるエネルギー消費原単位の数値目標の基準年を「1990年度から2013年度」に変更し、目標を「2020年度6.8%削減」、「2030年度15.7%削減」としとした。
- 2019年5月改定:世界的な資源・廃棄物制約や海洋プラスチック問題を踏まえ、プラスチック資源循環並びに海洋プラゴミへの対応項目を追記した。また、紙製容器包装使用量原単位の数値目標を目標年度「2020年度から2030年度」に変更し、目標を「2030年度 50%削減」とした。更にプラスチック製容器包装に関して新たに数値目標を設定した。店舗からの廃棄物最終処分量に関しても目標年度「2020年度から2030年度」に変更し、目標を「2030年度 60%削減」とした。
- 2020年1月改定:政府の「プラスチック資源循環戦略」、2019年5月G20 大阪首脳会を踏まえ、脱炭素社会・循環経済社会への転換を明記。さらに、容器包装に関し環境性能が認められる製品利用を追記、新たに基本方針を策定した。
- 2021年9月改定:政府の「2050年カーボンニュートラル宣言」(昨年10月)、改正地球温暖化対策推進法の公布(6月)等の脱炭素社会の実現に向けた動きを踏まえ、店舗におけるエネルギー消費原単位の数値目標を基準年比で2030年までに「26.5%削減」として取組みを強化することとした。また、新たにCO2排出量を基準年度(2013年)比50%減とする目標を追加した。